バーテンダーになったきっかけ。理由。

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「なんでバーテンダーになろうと思ったんですか?」

たまに聞かれます。

 

自分にはあまり明確な理由は無く、目指してバーテンダーになったというわけではありません。

なのでこれからバーテンダーを目指している方々にとってあまり参考にならないかも知れませんが、自分がバーテンダーを始めた流れときっかけを一度お話しさせていただきます。

 

少し遡りますが…大学2年の時にキックボクシングのプロデビューをして、自信も実績もあったので、就活はせずにキックボクシングをやっていました。

ただ、視力がとても悪く、試合も練習もずっと1dayコンタクトをつけてたんです。

当然外れます。

練習中に変なところにいったときは「ちょっとたんま」が使えます。

しかし試合ではそうはいきません。距離を取ってグローブで眼をこすり、なんとかするしかありません。今思うとよくやってたなと思います…。

当時の裸眼視力は両眼等しく0.07です。

同じくらいかそれ以下の視力を経験されている方にしかわからないことだと思いますが、裸眼で日常生活が送れないレベルです。

試合中は十中八九外れます。片目ずつとか、片目だけとか外れたりします。

コンタクトレンズが入っている方の目は視力が良いので、距離感がおかしくなったり、変なところにいったコンタクトを外す為に、試合中余計な展開をしなければいけなくなります。

このままではいかんと思い、視力矯正手術ラゼック(レーシックではなくLASEK)を受けます。

この静養期間というのが半年ありまして、半年間激しいスポーツやダメージは禁止ということになりました。

この間、時間が出来たのでもともとやっていたバンドに加えて掛け持ちをしたり、キックボクシングに対しての熱が冷めて、ちゃんとしたバーで働いてみようと思ったわけです。

バーで働いてみたいと思ったきっかけは、昔のバイト先の先輩が元バーテンダーで色々お酒について教えてくれたことと、客としてバーに通い始めたことから、自分もバーで働いてみることに興味がわいてきたからです。

当時から酒を提供する店で働いてはいたので、なんとなく作ったり、なんとなく飲んではいましたが、酒を作ったり知ることが面白くなっていきました。

最初に興味を持ったのはウイスキーです。モルトバーだなんて知らずに入って通うようになったお店がたまたまモルトバーで、そこで初めてちゃんとシングルモルトというお酒を飲んだんですが、それが面白かったんですよね。全然知らない世界がそこにありました。

ウイスキーやカクテルの本を買いだしたのもこの頃です。自分が制覇したカクテルやウイスキーはチェックしたりしてました。カワイイです当時の自分。笑

それからいろんなバーに足を運び、週に何度か通うような店が何軒か出来、バーの常連になっていくうちに他のお客さんやマスターと親しくなったり、バーの繋がり、飲み屋同士の繋がりのようなものが面白いと感じるようになりました。一人飲みにハマってましたね。

格闘技の現役時代から酒はガッツリ飲んでいましたが、“酒を知る”ということが楽しかったです。

バーで働きたいと思うようになってすぐ、mixiでバーテンダーの求人をみつけ、そこに応募し働くことが出来ました。

いわゆる町場のショットバーでした。

格闘技から離れて次どうしようと思った時に興味があったから業界に入ってみただけで、当時は長くバーテンダーをやること、その後バーテンダーになることを目指していたわけではありません。

当時の店でオーナー不在時に店を任せられていたのが自分と同じ年のスタッフでした。そいつが同じ年のくせに、まーー酒のことはよく知ってるし、接客出来るわけですよ。

一方自分は無知で酒も作れない、知らない人といきなり雑談するスキルもないわけです。少し会話が進んでも、結局酒の話になると全部上にやってもらうしかありません。

今のお客さん達には信じられないと言われますが、バーテンダーとしては全然おしゃべりが出来なかったんです。バーで何話したら良いの?みたいな。

当時は早くフードオーダーが入って欲しいと思っていましたね。そしたら裏に行けるので。笑

ただ、格闘技生活が長く好きなことに関しては負けず嫌いだったので、同じ年で負けてる自分が嫌で、とにかく早くそいつに追いつこうと必死になりました。

もう眼の静養期間はとっくに終わっていましたが、当時はキックボクシングの道に戻ろうとはしていなかったですね。

見習いバーテンダーとしてなにも出来ない自分にはやること覚えることがいっぱいでした。

それからはさらにたくさんのバーに足を運び、技術を盗み、一人で勉強、練習をこなしました。とにかく他所のバーに行きましたね。

そこで勤めて半年くらいでしょうか。まだ経験には乏しいものの、先ほどのスタッフになんとなく知識は追いついた感じがありましたし、完全に上司部下、先輩後輩だった関係性も少し距離の近い“スタッフ同士”になり、ウイスキーなど自分の方が得意な分野も出てきました。

1年経ったくらいにはフラットな同僚でしたね。負けてる気はしなかったですし、認めてもらっていました。しょっちゅう一緒に飲みに行ったり、敬語もなくお互い友達みたいな感覚になっていましたね。

とは言え当然彼の方が給料は高かったので、色々と面倒を見てもらいましたし、世話になったなぁと思います。

あ、付き合いがなくなったわけじゃないですよ。

一緒に働いたのは一年半位だったと思うのですが、彼が先に辞めて他の店に移った時も遊びに行きましたし、今の自分のとこにも何度か来てくれたこともあります。彼は家庭を持ったので一緒に飲むことも減り、今は何年かに一度会うくらいでしょうか。

彼よりは当時のオーナーの方がよく会います。お互い店の場所は変わらないので、たまに遊びに行ったり来たり、ヨソで遊ぶこともあります。

この負けず嫌いや興味の方向性が勉強・学問に向かっていたら自分にはきっと違う未来があったことでしょう…。笑

話がそれましたが、当時のお店で自分も早々と任せてもらえるようになっていたので、ある時今後のことを聞かれた際「次は考えてる」と話したら「辞める時は一年前に言ってほしい」と言われました。どの程度本気で言ってんのかわかりませんけど。笑

なので、「じゃあ一年後を目安に」ということで一年後に辞める方向に向かい、その頃から物件を探し始めることになりました。

その後は物件も決まり次のステップへ進みつつ、ちょうど退職宣言から1年後に退職しました。

トータルで3年半ほどお世話になりました。

このお店を辞めておよそ2か月後に今のお店をオープンすることになります。当時が26歳です。それから今に至ります。

これが、自分がバーテンダーになった流れです。

結局キックボクシングは引退という引退の形をとったわけでもなく、なーなーでやめてしまいました。25歳位には復帰したいと思っていたんですがね。戻らなかったことは今でも後悔しています。

言い訳をすると、当時は格闘技が盛り上がってなかったんですよね。魔裟斗選手たちの活躍から、今の那須川選手や朝倉兄弟さんのような盛り上がりまでのちょうど格闘技が下火の時期だったので、新しいことを見つけた自分には、その先にやる気と将来性を見いだせなかったです。

そして必至に勉強したとは言っても、圧倒的にバーテンダーの方が楽でした。気にせず酒が飲めるし、減量がない。笑

あと真面目な話をすると、バーテンダーは一番にならなくても食べていけますからね。格闘技で食べていくにはトップにならなければいけませんが、バーテンダーは周りのお客さんにだけ認めてもらえれば成り立ちます。可能性としてもバーテンダーの方がよっぽど楽です。

なので、自分がバーテンダーになったきっかけや理由は恐らく「単なる逃げ」。ものすごく消極的な理由からバーテンダーを選んだだけかも知れません。逃げ道がたまたまバーテンダーだった。

だからか、カクテルの順位を競うような大会に興味が無いです。味覚という“感覚”を競い第三者に評価される意味が分かりません。格闘技は当人同士、強いか弱いか、勝つか負けるかですから。

自分はバーテンダーの資格のようなものも持っていません。昔受けようと思ったことがあるんですが、謎に高い受験料と認定料を払わされることが嫌でくだらなくて止めました。その分いろんな酒飲んだ方が勉強になります。

実際、バーテンダーとして仕事をするのになんの資格も必要ありませんし、なんの資格を持っていなくても知識と技量に優れたバーテンダーはたくさんいます。逆に、バーテンダーとしての経験に乏しくても受験することが可能です。

これらはあくまで自分なりの考えですよ。

今のお店をオープンしたのは26歳の時ですから、まだ転職は出来たでしょう。何故あの時転職しなかったんだろうとも後悔しております。笑

今の仕事自体は好きですよ。良い仕事だし、楽しいと思っています。

ただ、今の時代バーテンダーになりたいと思っている方がどれだけ居るかわかりませんが、自分はバーテンダーをお勧めません。

やりがいのある楽しい仕事だとは思っていますが、絶対勧めません。

自分はやり直せるならバーテンダーを選びません。

未だにバーテンダーを辞める夢を持っています。笑

 

今日は、たまに聞かれる「バーテンダーになろうと思ったきっかけ」についてお話させていただきました。

これからバーテンダーを目指す方にとって参考にならない話ではありましたが、「こんなことからなんとなくバーテンダーになったヤツもいる」ということでお話しさせて頂きました。

ぶっちゃけ酒の知識や作る技量がなくても、人間としてお客さんに認められればやっていけます。

個人の飲食店がたくさんあるのはそういうことです。飲食物自体に大して魅力が無くても、人間の魅力で成り立っている店がたくさんあるのも、そういうことです。

こう書くと自分が認められた人間のようで気が引けますが、少なくとも7年間皆様に支えて頂けているというのは、自分の存在がひと様の娯楽に多少なり貢献出来ている証拠、実績であるとは思っております。

バーテンダーでいる以上、これからも皆様に良き時間を過ごして頂けるよう、楽しんでいただけるよう努め、ウマイと思って頂ける酒を提供し、そして一緒になって飲んで行こうと思います。笑

読んでいただいた方々、どうもありがとうございました。

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バーテンダーの生活コーディネイト

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